映画鑑賞 - ミッドナイトスワン

 先日友人と「ミッドナイトスワン」観てきました。

仕事終わりにバタバタと日比谷TOHOシネマズへ。

時間配分をかなり甘くみていて思い切り遅刻、飲み物を買う時間もなく

さらに日比谷のTOHOシネマズは広いというか連絡通路で別のフロアへの移動も必要で、劇場内に飛び込んだときには汗だくでした。

今は世の中「鬼滅の刃」一色だから空いてると思っていたのですが、密にはなっていませんがかなり混んでいたのでやっぱり評判が良い人気映画なんだなーと思いました。

私がこの映画で心を動かされたシーンはたくさんあって書ききれないので3つだけメモしておきます。



---------------ネタばれあり---------------

【一果の肌荒れ】

一果にストレスがかかっているだろう環境での、一果の肌荒れの再現が素晴らしかったです。

最初の上京前の広島でのおでこのニキビはすごくて、もともとのこの女優さんの若さ故の思春期ニキビだと思っていました。とっても美人なのにこのニキビはかわいそうだな、でも大人になればそのうち治るよ、などとごちゃごちゃ考えていました。

上京後の慣れない生活でのニキビも変わらずひどく、若さの象徴よね〜と思っていました。

しかし実母と離れてバレエで生活と精神が落ち着き、バレエ教室の先生から一目置かれる頃にはすっかりニキビが減りお肌のキメが整ったと感じました。この時まで「撮影期間に肌は変化するよね、若いし大変だな。なかなか美肌を維持する年齢じゃないのよね〜」と思っていたのです。

私が「あっ!」と気づいたのは再び広島に戻ったとき。おでこのニキビが今までで一番悪化しており、顔の周りから顎にかけてニキビが広がっていました。ここでやっと、これはこの女優さん特有の肌荒れじゃない!こういうメイクで精神状態を伝えてきてる!と気付きました。

そこからはもう、肌の状態をいつも気にして観てしまいました。ラストシーンの肌で間違いなく肌荒れメイクだったんだと確信でき、そこに面白さを感じました。

【幼少期〜10代の影響】

幼少期〜10代の子が出てくる映画ではいつも思うのですが、この「どうすることも出来ない」「逃げ場がない」という気持ちは金銭面と環境から来ているものだから、どうにでもなるから開放してあげたい、と思ってしまいます。大人になれば回避できることを子供だからという理由で強いられている、というのが苦しくてたまらないと思うのです。

苦痛なことばかりが続き逃げられない状況にあるから屈折したり、その大切な数年をやり過ごすために自分の精神を歪めてどうにか持ち堪えようとする。

私は今仕事がありお金があり、逃げ出すことが可能な状態にいる大人だからこそ「やばい」と感じたらその場から消えることができるけれど、それは子供の頃には思いつきもしない、実行することはできない。「いつか」は出来る。けど今「一番苦しいとき」に出来ない。

この映画で出てくる中学生を思いながらそう考えてしまいました。特に一果と仲良くなってくれた同級生の衝撃的なシーンでは、私はここまでの精神状態になったことがないので「初めて『死』を意識してそれを望む人を見たんだ」という強烈な思いが胸に残りました。

【お母さんになること】

トランスジェンダーの凪沙の物語なので、一番心を動かされたシーンではあるのですが。母性が目覚めていく姿がとても素敵でした。母性というのは女性の象徴のようなもので、自分の性と身体の性が一致してない以上絶対に母にはなれないという凪沙の気持ちが、それでも一果を娘のように愛するという決意に変わり、変貌していく姿がとても強い女性だと感じました。

凪沙にとって見た目を女性にすることが第一歩であり、一番高いハードルであるということを思い知らされるシーンがたくさん散りばめられており、そこはとっても苦しかった。ホルモンの注射を打っては体調を崩すこと、日本での安全な性転換手術のために高額な貯金をしていること、性別の不一致が原因で安定した職業をなかなか手に入れられないこと、それがじわじわと様々な場面でボディーブローのように効いてくる。

バレエの先生に「お母さん」と呼ばれて否定しながらも弾けるような笑顔で声を上げなら笑う姿、ハニージンジャーソテーを作って食卓を囲む姿、一果にバレエを習う嬉しそうな姿、コンクールの会場で一果の髪をとく姿。凪沙が幸せそうなシーンはとても少なく、こんな姿がいつまでも続いて欲しいと願わずにはいられませんでした。女性なのに女性と認識されない、でも母親よりも母親らしい女性の凪沙がいつまでも忘れられませんでした。

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私が映画を観終わったあともずっとこの映画を忘れられないのは、ここには書けないほどの衝撃が詰まりすぎていてまだ処理ができていないからかなと思います。

一緒に観に行った友人とそのあと2時間お酒を飲みながら語りましたが足りませんでした。

この映画の小説を読み、何度も劇場に観に行く方が結構いらっしゃるようで驚きました。みなさんのメンタルの強さに。私はもうヘトヘトになっており、あと一週間はこの映画の人物たちを想って過ごすのだろうと思います。

ここ数年で一番揺さぶられた映画であったことは間違いないです。

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